電磁波はいつ頃から問題視されるようになりましたか?


 電磁波はいつ頃から問題視されるようになりましたか?


 電磁波に関する研究機関の報告や訴訟問題を中心に年表を作りました。
古くは第2次世界大戦中のレーザー技師に体調不良を訴える人が続出した記録があるそうですが、低周波である送電線の電磁波問題は1970年代の「ニューヨーク州送電線訴訟」がはじまりと言われています。
携帯電話の電磁波問題については1993年に「妻が脳腫瘍になったのは携帯電話が原因だ」と訴える男性がマスコミに取り上げられたのがきっかけになったと言われています。
送電線や電化製品の極低周波の電磁波についての研究発表は色々とありますが、携帯電話のマイクロ波に関しての研究結果はまだ十分に安心できるほどのデータが示されていないのが実情です。

1973年 ニューヨーク州の電力庁、電力会社がカナダからの電力供給を受けるための76万5000ボルト送電線建設計画に対して、建設予定地の住民側から建設中止を求めて訴訟が起きた。
訴訟はニューヨーク州公益事業委員会の調停によって和解が成立したが、その和解過程において研究費500万ドルをかけて調査研究が行われた。これが電磁波問題として社会的に注目されるきっかけとなった。
気になる研究結果だが、1987年の最終報告書でほとんどの研究において影響なしとの結論が出された。
1979年 米国のウェルトハイマー博士がデンバー市に住む人たちの中で小児白血病で死亡した子供たちおよび対象者が住んでいた所を送電線などの電力施設からの距離で分類し調べた結果、磁界が強かった区分と弱かった区分を比較し、オッズ比(相対危険度)3.0倍という結果が得られた。このレポートが送電線や配電線による磁界の影響が現れることを示した初めての報告となった。
1988年 米国のサビッツ博士が、上記のウェルトハイマー博士と同様の手法で、同地域の小児がん患者を反復調査。オッズ比(相対危険度)2.8倍との結果。
※オッズ費(相対危険度):ある環境下での集団と対照群でのそれぞれの病気にかかった率(または死亡率)の比
1990年 アメリカの大衆週刊誌「ニューヨーカー」のポール・ブローダーがコネチカット州のわずか200メートルにある9戸の家に、脳腫瘍や悪性の腫瘍が多発しているというルポ「メドウ通りの災厄」を掲載した。原因は古くからメドウ通りの中央にある変電所とそこから出る何本もの高圧送電線が原因ではないかとした。
※これはルポタージュなので鵜呑みにすることは出来ないようだが、マスメディアが扱った電磁波問題の代表的な存在とされている。
1992年 米国カリフォルニア州のスレーター小学校の副校長が死亡した原因は、学校の近くを通る送電線からの電磁波が引き起こしたガンであるとして親戚たちが電力会社に対して訴訟を起こした。しかし資金の不足と科学的証明の欠如のより原告は訴訟を取り下げる。
1993年 スウェーデン国立カロリンスカ研究所のマリア・フェイヒティングさんは高電圧送電線から300メートルの範囲内に住む人たちを対象に25年間の追跡調査のデータを収集、分析した結果「小児白血病は電磁界との相関が見られる」と修士論文において発表した。
1993年 アメリカCNNテレビで携帯電話メーカーと販売業者を相手どって損害賠償請求訴訟を起こしている男性が出演。「妻が脳腫瘍になったのは携帯電話が原因だ」と訴える。「ウォールストリート・ジャーナル」や「ロサンゼルス・タイムズ」がこの事件を取り上げたために一時は携帯電話メーカの株価が暴落した。この事件が電磁波問題の対象が送電線から携帯電話に広がったと言えるだろう。それにより日本でも普及しはじめた携帯電話とともに電磁波問題も叫ばれるようになってきた。
1994年 クリントン大統領は「カロリンスカ研究所の調査結果を証明する事実があれば行動を起こさねばならない」と発言。総額5600万ドルをかけて電磁波の生体影響に関連した調査研究(EMF-ラピッド計画)を行うと発表した。これは社会的な電磁波への不安を沈静化させることを目的としていたようなのだが、逆に「これだけの国家プロジェクトを組むぐらい電磁波は有害なのだ」という論調まで現われた。
1995年 テレビ朝日系列の報道番組「ザ・スクープ」で電磁波問題が取り上げられる。
1995年 米国物理学会が「電力線の電磁界と公衆の健康について」という声明を公表。「調査した科学的文献や調査報告書には、ガンと電磁波とのあいだには一貫性があり有意である関連性を示すものは、ひとつもない」
1996年 米国科学アカデミーが過去17年間に発表された500以上の研究論文を総合評価し,「これまでの研究では,電磁波が人の健康に危害をもたらすことを示してはいない」
1996年 世界保健機関(WHO)『国際電磁界(EMF)プロジェクト』を創設。2005年まで10年間かけて新しい「環境保健基準」をつくろうというもの。EMFプロジェクトの目的の1つは、人間が受ける電磁波の許容量に関する国際基準を確立すること。水面下では厳しい基準を求める環境派と甘い基準を求める経済派との間で激しい争いが繰り広げられているとか。
1997年 米国国立がん研究所の疫学報告書「商用周波磁界と小児白血病との相関なし」
1999年 EMF-ラピッド計画の結果報告が出された。しかし、今度は膨大な研究結果レポートをどう解釈するかが争点となっているようだ。
「実験動物において白血病が増加する兆候は観察されていない」としながらも、高圧送電線などによる生活中の商用周波数の磁界には「発がん性があるかもしれない(発がん性のランクは”2b”)」との結論も出ている。要するに完全に安全であると立証することができないので注意が必要だと解釈していいのではないか。新聞社等のマスコミによっても報じ方が違うのも困ったものだ。
最終報告書については下記の米国ラピッド計画のホームページで見ることが出来る。
2000年 郵政省が携帯電話と脳腫瘍に関する疫学調査を開始。
2001年 英国放射線防護評議会(NRPB)は「超低周波電磁界とそのがんリスク」で「一部の疫学調査から証拠としては弱いが、磁界が小児白血病リスクを増加させる可能性は疑問として残る。」

 

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