電磁波の基準値は決められているのですか?


Q 電磁波の基準値は決められているのですか?


A 電磁波の基準値については、古いものでは1953年に米海軍が定めたものがある。その後、電子レンジや無線機器の普及に伴って、各国で防護基準の制定が行われた。
欧米諸国は熱作用を重視した基準を制定し、東欧諸国は非熱作用の可能性も考慮し、安全基準値をより厳しく定めている。このため、欧米と東欧では基準値の違いが大きく、現在でもVHF帯の電界強度限度値は20倍も違っている。

一方、我が国では、昭和60年頃から郵政省で電磁波に対する防護指針の検討が開始され、昭和63年には電気通信技術審議会にその諮問が行われた。平成2年、郵政省電気通信技術審議会は、10kHzから300GHzまでの電波を対象とした「電波防護指針」を答申しました(平成9年に改訂)。
総務省は電波防護指針は、世界保健機関(WHO)や国際労働機関(ILO)と協力関係にある国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が示している国際的な指針と同等基準で安全であるとしています。

電磁波防護指針(出典:社団法人電波産業会(ARIB)ホームページより)
電波防護指針は、その根拠となる基礎指針と、実際の評価に用いる管理指針に分けられます。基礎指針は、人体が電波にさらされるとき、人体に生じる各種の生体作用に基づいて、人体の安全性を評価するための指針です。具体的には、安全率を考慮し、全身平均SARの任意の6分間平均値が0.4W/kg以下であること等が定められています。
一方、管理指針は、基礎指針を満たすための実測できる物理量(電界強度、磁界強度、電力密度、電流及び比吸収率)で示した、実際の評価に用いる指針のことをいいます。ちなみに、携帯電話基地局や放送タワーの電波は、電界強度、磁界強度及び電力密度で表した管理指針に基づいて規定されています。なお、周波数等により人体に与える影響が異なることから、指針の値は周波数等によって異なっています。
さらに、管理指針は、これを適用する環境を管理環境と一般環境に分けて規定しています。両者の違いを簡単に言えば、管理環境は電波について専門的な知識を有する人のみが入る環境、一般環境は電波について知識のない一般の人も入れる環境です。このため、一般環境の指針値は、管理環境から5倍の安全率をとって厳しく決められています。

総務省「電波利用ホームページ」電波防護指針

電磁波の基準値については、大久保貞利氏著「誰でもわかる電磁波問題」にも掲載箇所がありましたので、引用させて頂きます。

出典:大久保貞利氏著「誰でもわかる電磁波問題」p.185~198
第12章 これならわかる電磁波Q&Aより安全基準に関する内容を抜粋

Q.電力会社は50ガウスまで安全だとWHOの資料を使って言ってますが本当ですか?
A.WHO(世界保健機関)が1987年に出した「環境保健基準69」の中で「50ガウス以下の50/60ヘルツ磁場では有害な生物学的影響は認められていない」とあるのを使って、電力会社は50ガウス以下は安全といっています。しかしWHOの国際EMFプロジェクトの共同責任者マイケル・レパショリーは「50ガウスはWHOの正式な基準ではない」と言っています。いま、2005年に向けてWHOは新しい環境保健基準づくりに着手していますが、その過程でWHOのIARC(国際がん研究機関)が2001年6月27日に「極低周波磁場の発がんリスク2B(ヒトに対して発がん性の可能性あり=possible)」に分類することを全会一致で決めたのです。その根拠は「4mGで小児白血病リスク2倍」という疫学調査から引き出しました。4mGは50ガウスの12500分の1です。もう50ガウスを持ち出す時代ではないのです。

Q.電力会社は「5ガウス」とか「1ガウス」もよく説明会で使いますが。
A.5ガウスは同じ1987年の「環境保健基準69」の中でWHOが「5ガウス以下ではいかなる生物学的影響も認められない」と書いてあるのを電力会社が「安全の根拠」として使っているのです。これも50ガウス同様「正式な基準ではない」のです。1ガウスはICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)が決めたガイドラインです。いずれにしても電磁波の熱作用しか念頭にない頃の数値です。その後研究がすすんで非熱作用である「4mG説」が出ているのです。

Q.総務省が「1mW/cm2」を法規制基準としていますが、安全とする根拠はなんですか。
A.総務省は2000年10月から電波法施行規則を一部改正し、基準値を設けましたが周波数毎に基準値は異なります。1.5GHz以上は電力密度(総務省は電力束密度といいます)「1mW/cm2」 です。300MHz~1.5GHzの領域の電力密度は「周波数/1500」の計算式で出され、800MHzの携帯電話の電力密度基準は「0.53mW/cm2」です。総務省は電磁波の熱作用を安全の根拠にしています。

Q.日本の規制基準はあるのですか?
A.高周波については、電磁波防護基準として「1.5GHzで1mW/cm2」 ということはすでに述べましたが、極低周波については磁場規制は全くありません。スイスは2000年2月から「10mG」基準を作っていますが日本ではありません。電場規制については経済産業省が「3KV/m」の基準を作っています。商用周波数は経産省の管轄です。 「3KV/m」というのは「やや髪が逆立つ程度」というのですからひどい国です。

Q.電波干渉について教えてください。
A.電波干渉は国も認めています。下図のように乱・雑電磁波障害の例はいくつもあります。とくに携帯電話は電磁波が強く医療機器に悪影響を与えます。最近注目されているのは図書館やビデオショップにある盗難防止装置のセンサー装置です。ゲートを老人がゆっくり通ったら心臓ペースメーカーがリセット状態になりました。盗難防止装置は機器への干渉だけでなく人体への影響も問題です。外国では子供は背が低いので頭部にセンサーが命中しますし、近くで働いている従業員の被曝量も相当なものです。米ユタ大学のオム・ガンジー博士は盗難防止装置からICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の基準値「60ミリアンペア/cm2」を超える量が出ていると警告しています。

Q.どの位なら安全なのですか?
A.『クロス・カレント』の著者ロバート・ベッカー博士は「極低周波で0.1mG説」をとっています。過敏症の人は「0.3mGから反応する」と言ってますから0.1mGは妥当な線です。高周波については、ワルウィック大学のハイランド教授が「理想的な電力密度0.001μW/cm2以下でなければならない」と言ってます。要は過敏症の人が安心して暮らせることが必須条件です。

Q.どういう対策をとるべきですか?
A.国が大規模な健康調査をすることと、当面、極低周波については「4mG以上」の子供のいる居住環境の改善と、高周波についてはザルツブルグ基準の「0.1μW/cm2」 以上になる基地局等の建設の凍結です。とくに学校、幼稚園、保育園、住宅、病院の近くに電磁波発生源としての送電線、変電所、基地局の建設を規制すべきです。
建設にあたっての住民同意の確率も大切です。個人においても身のまわりの電気製品や電気配線にもっと注意を払うべきです。基本はあくまで「発生源から離れること」と「被曝時間を減らす」 ことです。

高周波の規制値比較
中継基地局からの電磁波規制 高周波の規制値について(国際比較)

国名等 規制値 備考
スイス 4μW/cm² 連邦政府が2000年2月より
イタリア 10μW/cm²  
ロシア 2.4μW/cm²  
中国 6.6μW/cm²  
ICNIRP 450μW/cm²  
日本 1000μW/cm² 1.5GHzの場合
ブリュッセル 2.4μW/cm² 予定
ザルツブルグ 0.1μW/cm² オーストリア(提案中)
フォローゲン州 0.001μW/cm² オーストリア(提案中)

※ICNIRP:国際非電離放射線防護委員会

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