携帯電話のあるところには欠かせない携帯基地局、その基地局から放出される電磁波が周辺住民の体調不良 (耳鳴り、頭痛、鼻血など)を引き起こしているかもしれない。

現地でも、欧州評議会議員会議(PACE)の勧告値の 44倍もの高い数値が計測されている(裁判所の認定。ただし、日本の規制は下回っている)。 こうした健康被害を理由に、延岡市大貫町の住民がKDDIを相手に起こした裁判。2012年10月17日の宮崎地方裁判所の 一審判決では住民が主張する症状については認めるものの、「直ちに、それが電磁波による健康被害であると認定することは できない」としてノセボ効果(思い込み効果)の可能性を指摘し、原告の請求を棄却した。

この判決に納得できない住民と原告弁護団は、福岡高等裁判所宮崎支部に控訴。この控訴審が9月5日に結審し、 12月5日に判決が言い渡されることになった。 電磁波と体調不良の因果関係を認めてしまえば、携帯電話業界に大打撃を与えることが予想されたためか、地裁判決は 企業寄りの判決になっている。
しかし、今回は、新たな論点が出てきた。「マイクロ波聴覚効果」だ。 マイクロ波聴覚効果については科学的知見を基に世界保健機関(WHO)、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)も その存在を認めているもので、無線周波数の特性によって、「ザーザー、カチカチ、シューシューなど、さまざまな音として説明 されている。
長時間の曝露や繰り返しの曝露はストレスを生じるだろうから、できるだけ避けるべきである」(WHOファクトシート) 電磁波工学の専門家である九州大学の吉富邦明教授は、証人尋問に応じ、実際に計測したところ、「基地局周辺の 多くの地点で計測された電磁波の強度は、マイクロ波聴覚効果の閾値を上回っており、I基地局から発せられた電磁波の 強度であれば、マイクロ波聴覚効果により耳鳴りなどの症状を説明できる」と述べた。

KDDI側は真っ向から反論し、マイクロ波聴覚効果の閾値についても争っているが、国際的にも数値には幅があり、 数値の取り方次第で、健康に影響を与えるレベルの評価が変わってくるのだ。 携帯基地局訴訟で健康被害は認められ、撤去を命じられるのか、注目したい。